2011年06月10日

時の記念日(マニア向け)

先日、マニア仲間のえふわかさんまりんさんからオススメの写真集『アンテナのある風景』(クリエイト・クルーズ、1994年)を見せてもらったのですが、掲載されていた中でも特に感慨深かったのがJJYを吹いていたころの名崎無線送信所(茨城・三和町、現古河市)です。

今日6月10日は「時の記念日」ですが、おそらくスカイツリーマニアとも一定数重複していると思われる無線マニアの間では、時刻と言えばJJYであります。しかも、現在の長波JJY(※1)でなく、かつて音声として聞けた短波JJYのほうが印象深いのではないでしょうか。

私がアマチュア無線を始めたのはちょうど太陽黒点がサイクル22の極小期に向かって落ちていく時期で、ようやくコツを覚えてきたところで遠くの局がどんどん聞こえなくなっていくという残念な状況でした(※2)。そのためか、交信自体よりいつも聞こえる短波JJY(とか中央放送時代の9650kHz)とかに何となく関心が移っていきました。いつも聞こえるといっても短波ですからフェージングや海外局の混信でグワングワンしていて、その中から規則正しく聞こえてくるピョッ、ピョッ、ピョッというクリック音、1分ごとのポーッ、ピーンに耳を傾けていると、それはもう涅槃に片足突っ込みそうになるわけですよ。(実際、お経を聞いているような恍惚感がありました)

そんな短波JJYが2001年03月31日に停波して、今年でちょうど10年。もう今は2.5/5/8/10/15MHzを聞いてもあのときのクリック音は聞こえません(まぁ中国のが聞こえますが)。今思えば、録音しておくべきだったなと。

そう思って検索してみたらやっぱり、停波日を含めたJJYの録音がザクザク出てくる。まず引っかかったのは「名崎送信所研究サイト」のこちらのページ。一番上にMP3があって、これは確かにJJY! ……しかし違う。送信所のすぐ近くで録音した音源だけあって極めてクリアーなのですが、多くの人の記憶の中では、JJYはこんなに澄んだもんじゃなかったはずです。

そう思ってニコニコ動画を検索してみたら出たー! そうそうそう、このフェージングですよ! 2chの過去ログにも「短波JJYを懐かしむスレ」なんてあって、標準電波をBGMとして楽しんでいた人が大勢いることを確認できて嬉しくなります。

そう思ってさらに検索を進めてみると、本当にやばい音源が出てきました。さすが電通大。先の名崎送信所近くで録音された音源と同時刻の内容ですが、ノイズがリアルな分こちらのほうが断然グッと来ます。最後のNNNNN(電波警報で「異常伝播なし」の意味)は涙無しでは聞けません。最初に再生したときには、感動を通り越して悲しみに近い感覚が沸き上がってきました。

もちろん現在の長波JJYはより高度で信頼性の高いシステムになっているわけですが(いや福島第一原発の影響はさすがに文字通りの想定外だと思いますが)、しかし機械にしか理解できないパルスではなく(いや鍛えれば人力デコードも不可能ではないと思いますが)、可聴周波数で変調されている標準電波を楽しめたのは、今考えると本当にいい時代だったなと。

私が新タワーに注目したのって、土建的な面白さに加えて、きっとこの手のネタの宝庫になるだろうなという期待があったからなんですね。だから「いよいよ展望台の開業日決まりましたね、楽しみですね!」とか言われても「えっ、あ、まぁ、そうですね……(そのニュースの何を面白がればいいのか?)」としか返せなくてすみません。

※1:現在の長波JJYは電波時計にも使われていておなじみですが、長波の標準電波といえば「JJY」よりも「JG2AS」のコールサインが思い浮かぶという方も多いのではないでしょうか。1990年代半ばには、JG2ASを受けられるマルマンの電波時計「グリニッジアラーム」(JunghansのOEM)が話題となりました。建物の中では電波が受からないことのほうが多かったくらいで、そのドジっ子ぶりが可愛らしくて、マニアの間では「グリちゃん」なんて呼ばれていたことも。

※2:中学生で第二級アマチュア無線技士の試験に合格した当時の私は現在からは想像も付かない天才少年だったわけですが、それでも高価な無線機とアンテナを買い与えてくれた父親には感謝しなければなりません。結局無線家としては国内+台湾くらいとしか交信できず電信も叩けずじまいで、理科系にも進まなかったのですが、電気通信の知識と実践を初歩的ではあっても体験として得られたことは、少しですが確実に今の職業と趣味に役立っています。
posted by hidaka at 00:30 | TrackBack(0) | 新東京タワー周辺情報