タワーが建ちましたー!
ウソです。2004年に竣工した台湾の「台北101」です。高さは509.2mで、完成したビル(つまり未完成のビルやビル以外の建造物は除く)としては世界一です。もうすぐUAEの「ブルジュ・ドバイ」(818m)が竣工してしまうので、世界一を名乗れるのもあと少しです。いま台湾は梅雨の真っ最中なのでちゃんと撮るのが難しかったのですが、出張の予備日として確保しておいた帰国前日にようやく天候に恵まれました。
私は2005年6月にこのビルに上ったことがあり、今回が2回目です。最初に上ったときは、高さそのものへの感動は実はそれほどなかったのですが、エレベーターの速さにはかなりの驚きがあり、思わず声を上げてしまうほどでした。上る直前にそれを思い出して、今回はエレベーター内のモニターの表示内容を記録しておくことにしました。
(おそらくYouTubeにはもっときれいな動画があると思います)
5階からスタートして89階まで行くエレベーターなのですが、31階くらいから62階くらいの間では世界最速の分速1010m(時速60.6km)で上昇します。これだけ速いのに加速度の制御が絶妙で、下に押しつけられることによる不快感が全然ないのが素晴らしい。
あまりにもあっけなく89階の屋内展望台に到着です。ビルの展望台だけあって、非常に広々としているのがうらやましいですね。
ただ、台北はいつも蒸し蒸しでなおかつ排気ガスもすごいですから、昼間の外はだいたいけむっていてよく見えません。
この階の壁には建設プロジェクトの年表やビル内の設備紹介など、台北101に関する情報が満載です。これを撮影するのに必死になっていて、外の景色をほとんど見ていないことに後になって気が付きました。
そしてフロアの中央部に設けられた部屋に鎮座するのは……
660トンの鉄のかたまりでできたマスダンパーです。ビル自体とこの鉄球の揺れの固有周期をうまくあわせてやることで、互いの揺れを相殺し、風を受けたときのビルの揺れを小さくしています。
これを見ていたら近くにいたラテン系の言葉(スペイン語?)を話す外国人が「ワット イズ ディス」と尋ねてきたので、すぐそこの壁に説明が書いてあるのにと思いながら「ヒュージ アイアン ボール、フォー プロテクト ディス ビルディング、スウィング バイ ウィンド」などと答えたら「ウィンド? ノン、ノン、アース、クエイク」とか返されて、いやいやこれの主目的は風に対する制震ですよと何度説明しても「地震だろう」と言ってゆずらない。たぶん台風も地震もほとんど経験することのないところから来た人なのだと思いますが、大地震のカタストロフィはなんとなく想像できても、高層ビルが受ける風のエネルギーがいかに大きいかということは、なかなか理解できないものなのかもしれません。いや私も理解しているわけではないのですが。
さて、前回来たときには91階の屋外展望台には出られなかったのですが、今日は天気が良いので開いているということで行ってみます。そこへ上る途中にある90階部分にも注目です。
台北101は8階ごとに竹のフシのようなものがある外観ですが、フシの階は機械室となっていて、この90階が一番上のフシです。そして、フシの階には火災発生時に救助が来るまで待つための避難室が設けられているのです。さらに、フシが外に広がっている部分は、屋外避難用のベランダにもなっています。奇抜な外観のビルですが意外に合理的です。それにしても、こんなただの階段の踊り場をわざわざ撮ろうと思う人はおらず、観光客がひっきりなしに通るので、上の画像を撮るために人がとぎれる瞬間を待っていたら10分以上もかかってしまいました。この場所は冷房が効いていないので汗だくになりました。
で、屋外展望台も広々としていますが、まぁそれほどの値打ちでもないかなというのが正直な感想でした。
柵の先まで建物がかなり張り出していて、近くの景色はほとんど見えないのです。
台北101の「509.2m」は地面から尖塔の先までの高さです。個人的には尖塔を入れた高さより、屋上の高さを採用したほうがビルの高さとしては直感的な気がしているのですが、
世界高層ビル協会 の定義ではこの尖塔も高さに入っています。尖塔を抜いて軒高にすると、上海環球金融中心(栓抜き型のビル)の492mが世界一になり、尖塔がアリならアンテナの高さも入れるべきだろうと考えると、シカゴ・シアーズタワーの527.3mが世界一になります。こういったものの順位は定義次第でどうにでも変わるということです。
91階の室内にはビデオ上映の部屋がありました。
そうしたらこのビデオが私のツボにはまりまくりです! さっそく出てきたのは場所打ち杭です。
連続地中壁も出ました! 厚さ1.2m、深さ50mというサイズは東京スカイツリーの連壁とまったく同じですね。
タワークレーンは建物の内部ではなく外部建てだったようです。
いい絵がそろっています。このビデオをおみやげとして売ってほしいです。
上棟式の鉄骨がスルスルと吊り上げられていくシーンが流れてくるころにはもう涙腺がゆるみっぱなしで、鼻をズルズルすすっていたほどです。どんな感動巨編の映画を見ても何とも思わない私ですが、こういった映像にはめっぽう弱いです。5分ほどのビデオだったので、3回も繰り返して見ました。
建設中にはまだ総統でなかった馬英九氏が総統として登場していることから、この映像の上映が始まったのは早くとも昨年春以降ということなのでしょう。あるいは、このシーンだけ差し替えとかしているのでしょうか。それにしても、後々のためにこんな映像を撮ってあるなんて、なんと用意のいいことでしょう。
さて、帰りのエレベーターが出発する88階まで階段で下りてくると、そこにはなぜかサンゴのミュージアムができていました。これも、2005年に来たときにはなかったものです。この脈絡のなさがいかにも観光地です。いきなり東京タワーの足元の施設に来たかのようで、一人でおおいにウケました。
あっさりスルーして出口に向かおうとすると、そこにはサンゴのみやげ物店がありました。いやーこのわかりやすいベタな展開がたまりません。
やはり観光地というのはこうあるべきだと思います。世界一のビルとかそんなことはまったく関係ありません。東京スカイツリーでもぜひこれは見習ってほしい。下町文化を活かしたまちづくりがポイントなのですから、下手に小じゃれてスカした雰囲気というのはいけ好かない、帰りのエレベーターが到着階に着いて扉が開くと、そこにはスカイツリーまんじゅう、ペナント、ちょうちんなどを売るおみやげ屋さんが広がっているという展開をぜひ期待したいと思います。